モヤモヤ血管とは
人の身体には、筋肉・腱・靭帯・関節軟骨などが破壊されると修復する機能が備わっています。この修復に時間がかかっていると、人の身体は必要な物質を運搬するために新しい血管を作ります。この新しい血管がモヤモヤ血管です。
これら異常血管の近くには神経も一緒に延びているため、炎症のたびに痛みを感じてしまうことになります。
モヤモヤ血管の特徴
モヤモヤ血管は、いびつな形で、造影した際にモヤモヤして見えることからこのように呼ばれています。
蛇行したり、静脈と癒合したりして血流不足を改善する効果は低い血管です。
そのほか、以下のような特徴があります。
- 40歳を超えるとできやすい
- 繰り返しの負荷がかかっている部位にできやすい
- 一度できてしまうとなかなか減少しない
整形外科疾患とモヤモヤ血管
これらの疾患の痛みの原因にはモヤモヤ血管が関与している場合があります。
- 変形性関節炎(ヘバーデン結節、母指CM関節症、変形性膝関節炎、椎間関節炎など)
- 腱鞘炎、腱付着部炎(テニス肘、ゴルフ肘、ドケルバン腱鞘炎、足底筋膜炎など)
- 原因のはっきりしない慢性的な痛み(慢性腰痛症、肩こり)
モヤモヤ血管はなぜ痛い?
実は、痛みを発生させているのは、モヤモヤ血管ではなく、一緒に増生している神経です。
人体では、血管と神経が一緒に増生していくという性質があります。
痛みや炎症のある部位で血管が増えるということは、同時に神経も増えることになります。
この「余計な神経が痛みの信号を発してしまう」ことこそが痛みの増強や、痛みの持続につながっていることが最近解明されてきました。
そのため、モヤモヤ血管を減らすことで神経からの痛みの信号も減少し、痛みの緩和が期待できます。
動注治療とは

モヤモヤ血管による疼痛治療のひとつが、動脈注射治療(動注治療)で、動脈に直接薬液を注入する治療となります。
動注治療は体表に近い動脈からモヤモヤ血管にアプローチしますが、アプローチが困難な場合には、カテーテルをターゲットとする血管近くまで進めて行う治療(運動器カテーテル治療)もあります。
運動器カテーテル治療は専門設備が必要なため当院での治療はできません。
動注治療に使用する薬剤
モヤモヤ血管に対する動注治療は、ピンポイントでその部位を狙う治療であり、モヤモヤ血管のみを減らす作用が期待できる薬剤を用います。
具体的にはイミペネム・シラスタチンという薬剤で、20年以上前から抗生物質として感染症の治療に認可が下りている薬剤です。
なぜモヤモヤ血管を減らす治療に抗生物質を使用するのか?
この薬剤は、非常に溶けにくいことが特徴としてあげられます。
溶けにくいために少量の液体と混ぜると溶けきらずに小さな粒子となり、この粒子が血管内に注入されると、細かい血管で塞栓が起こります。
(簡単にいえば、細い血管が粒子により詰まります。)
つまり、モヤモヤ血管がたくさんあるところにこの薬剤を流すと、モヤモヤ血管の血流が悪くなり、ダメージを与えることができるのです。
治療効果について
モヤモヤ血管に対する動注治療の治療効果は治療後3~4週後に最も実感されることが多いようですが、1回の治療ですべてのモヤモヤ血管を除去することはできないため、4~6週程度の間隔を空けて2~3回治療することがお勧めされています。
また、一般的には高齢ほど動注治療の効果は出にくい印象があります。
(これはおそらく、モヤモヤ血管の蓄積が影響していると予想されます。)
動注治療の適応疾患
当院で行うモヤモヤ血管治療はカテーテルを使用しない動注治療であり、適応疾患は手・足・肘部分に限られます。
- 手関節レベルでの治療 (へバーデン結節、母指CM関節症、ドケルバン腱鞘炎など)
- 肘関節レベルでの治療(テニス肘、ゴルフ肘など)
- 足関節レベルでの治療 (足底腱膜炎、外反母趾、アキレス腱炎、有痛性外脛骨など)
動注治療を希望される患者様へ
外来受診
まずは外来を受診してください。
症状やお悩みを伺い、診断の上で当院での動注治療適応があるかを判断いたします。
検査
現在の症状がモヤモヤ血管由来かどうかをエコーでチェックします。
状況に応じてMRIなどをお勧めする場合もあります。
痛みの原因がモヤモヤ血管ではない可能性も考えられます。
ターゲットに到達するための血管が細く当院では対応が困難な場合や適応外のこともあります。
その際には、対応可能な専門施設への紹介や、代替治療を提案させて頂きます。
注意点
すでに変形してしまっている部分の変形が治る治療ではありません。
今後の変形の進行抑制効果は期待できると考えられます。
血液検査で鉄欠乏がある場合、効果が出にくい傾向があるようです。
鉄剤を1~2ヶ月間内服してから行うことをお勧めする場合もあります。
モヤモヤ血管のセルフチェック
2つ以上当てはまるとモヤモヤ血管がある可能性が高いです。
- 自分の指で押してみると、明らかに他の場所と比べて痛い場所がある(圧痛+)
- じっとしていても痛む
- 就寝前、就寝中の寝返りなどでも痛む
- 朝起きた時の動きだしが痛い
- 立ち上がり、不意の動作などの動き出しで痛い
- 痛みの感じ方は、ズキズキ、ジンジン、チクチク、重く感じる
- 天気によって痛みが変わる、クーラーにあたると痛い
- 飲酒後に痛みが強くなる
- 激しく運動した後に痛みが増す
動注治療の実際の流れ
- ①:エコー(超音波)ガイド下にアプローチすべき動脈の位置、避けるべき神経の位置などを確認し、消毒を行い血管周囲に局所麻酔を行います。
- ②:細い針もしくは留置針をエコーで確認しながら動脈に挿入していきます。
- ③:薬剤の注入を行います。
- ④:針を抜去し、注射部位を5分程度圧迫止血します。
約10分で治療完了となります。
注意事項
治療後は日常生活の制限はありませんが、入浴は控えてください。
運動は軽いものであれば治療後2~3日から可能です。
今まで痛みの原因となる運動、動作など負担がかかるものは治療後2週ほど控えていただくことをお勧めします。
薬剤注射後、薬が到達した部分では、焼けるような熱い感じやピリピリした感じや違和感が起こることがほとんどです。
また、一過性に血流低下を反映して皮膚の色調変化が起こります。これらは短時間の一時的なもので問題はありませんので心配は不要です。
動注治療の副作用について
注射による内出血、薬剤によるアレルギーが確認されることがあります。
※いずれも局所的な場合が多いです。
費用のご案内
動注治療は保険適用されず自費診療となります。治療を希望される場合は初診料 5000円+税 が別途かかります
疾患や部位ごとに費用は異なります。
手関節レベルでの治療
片側 | 27,500円(税込) |
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両側 | 38,500円(税込) |
肘関節、足関節レベルでの治療
片側 | 33,000円(税込) |
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両側 | 44,000円(税込) |
※部位追加毎に11,000円(税込)の追加となります
※運動器カテーテル治療は当院では施行できません。当院で施行できるのは動注治療のみとなります。
ご相談ください
長引く痛みでお困りの方、内服や湿布などではなく、根本から痛みの改善がしたい方は、一度ご相談ください。
動注治療での治療は困難で、運動器カテーテル治療が望ましい場合には専門施設に紹介も可能です。
動注治療について
この治療はオクノクリニックの奥野先生によって2014年に開発されたものです。
当院はオクノクリニックとライセンス契約を結び動注治療を行なっております。
(年間5,000人近くの方がこの治療をうけ、重大な副作用は出ておらず安全な治療です。)
オクノクリニックホームページでは過去にカテーテル治療を行なわれた患者様の症例報告も掲載され、また、YouTubeでも動画配信もございます。